
こんにちは黒猫の美術教室です。
ブログ遅れて申し訳ないです。
絵の制作に全集中していましたので、なかなか書けませんでした。
現在黒猫の美術教室では、作品制作に向けてそれぞれに必要な画力を鍛えております。結構進んできたので少しご紹介したいと思います。
想像以上に長くなってしまいましたので、今回は三名分といたします。
尚、すべて水彩紙に描いている練習段階の絵です。
他の子は書けるときに、何回かに分けてアップしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
シマエナガ

皆様シマエナガはご存知でしょうか。
シマエナガは主に北海道に生息する小鳥で、スズメ目エナガ科に属するエナガの亜種で全長は12~14センチと、スズメよりも小さく、日本最小級の小鳥である。(Wikipedia参照)
北海道の大自然に生息する小鳥です。
愛嬌のある顔立ちや表情で、人々を魅了しています。
そんな「シマエナガ」を描くのは小学校六年生です。
画力は、真剣に集中してやればかなり上手いと思います。
真剣に集中してやれば、というのがポイントです。
当然、皆が集中して真剣にずっと描けたら作品も進むのかもしれません。
しかし、それには注意が必要です。
黒猫の美術教室では、形取りの正確さ、難しい技術や技法等、小学生では馴染みのない本格的な美術指導をしているので、がちがちに真面目な空気間では子供達は音を上げてしまうのではないかと思います。
この辺は生徒様によって違うと思いますが、小学生ですから普通の事ですね。
そのため、ある程度楽しみながら描いてもらうというのも重要視しています。
ただ、僕も助手も基本的に明るく楽しい人間ではなく、控え目な性格だと思うので、 【子供を楽しませる】に関しては苦手分野だと思うんですね。
子供達と仲良くなれるよう、そして個人個人に沿った指導ができるように頑張ります。
さて、こちらの子は前述した通り、集中すれば結構上手いです。形取り、目の良さ、筆使い、どれをとっても優秀です。
今後の課題としては、集中する時間を長く保つこと。これが出来れば最強です。
きっと今回の絵も良い作品にしてくれるでしょう。
ここまでは、ひたすら観察をして繊細に描く作業だったので辛い時間でしたが、ここからは結構楽しいと思います。

背景に雪を降らせます。
筆で描いても良いですが、こちらの子は楽しみながら描く方が結果良い作品になると思いますので【スパッタリング】をしてもらいます。
スパッタリングとは、薄く溶いた絵の具を飛ばす技法ですね。
学校でやったことがある子もいるのではないでしょうか。
小学校だと歯ブラシでやるのかな?

でも歯ブラシは歯を磨く為の道具ですので、うちでは筆でやりましょう。
筆なら種類を変えて細かい調整も可能ですので。
今回は、スパッタリングで「いかに雪の奥行きが出せるか?」がポイントになりそうです。
画面奥に降る雪と、手前の雪は見え方が違うという事です。
これを表現するのに、必要なのは絵の具の濃度の調整です。
もっと詳しく書くと、ホワイトの調整になります。
ホワイトは基本的に不透明です。
ホワイトの種類により、透明感のあるホワイトもありますが、基本は不透明です。
絵の具にホワイトを混ぜれば混ぜるほど不透明に近づきます。
この性質を利用してスパッタリングしていきます。

まずは練習です。
こんな感じで絵の具を飛ばします。
ビシャッっとやると、綺麗な◯にならないので、なるべく綺麗な◯になるように優しくやるのが良さそうですね。
この練習中に奇跡がおきました。

なんと、肉球型になりました。
失礼しました。
小さいことですが、こういった部分でも楽しみを見つけながら行っています。

ちなみに、こちらの絵はスパッタリング前の絵です。
どう変わっていくか見てみて下さい。
では、本番いきましょう。
本番といっても、今回は水彩紙での練習用作品の本番です。本当の本番はキャンバスです。
本番のキャンバスを描く前に、個人差はありますが水彩紙で何度も練習しますので、今回は練習用作品の(スパッタリング)本番ということです。
さて、前述した通り、ホワイトの調整で奥行きを出します。
奥に降る雪からスパッタリングです。
濃度を調整して、さらにスパッタリング。

これを繰り返します。
画面が賑やかになりました。
いい感じです。
でも、やはりというか、予想していた通り、これだと不十分ですね。
スパッタリングだけでは限界があります。

最後に面相筆で一番近い雪を描き込みます。ついでにシマエナガにも雪を積もらせましょう。
この子は本当筆が上手です。

こんな感じになりました。
良いと思います。
これでも良いと思いますが、僕から見ると描き込みが足りなく感じますので、本番のキャンバスでは、さらに描き込みを頑張ってもらいます。
楽しみながら。
ウサチョコ
小学校三年生の生徒様で、小さい頃から大事にしてきたウサチョコを描きます。
ウサチョコという名前は、お姉ちゃん(現在小学校六年生)がつけたらしいです。
お姉ちゃんも黒猫の生徒様なので、聞いてみた所、覚えていないという事でした。
とても子供らしい子で愛嬌があります。

お姉ちゃんから聞いた話ですが、ディズニーランドでアトラクションに並ぶ待ち時間があるじゃないですか。
その並んでいる時間に、隣に並んでいたおじさん(知らないおじさん)と友達になったという伝説をもっています。
愛嬌だけではなく、ガッツもあります。
何度でも同じ事が出来ます。
何度同じ事をやっても、ネガティブな発言が無いんです。

むしろ、「お父さんと約束したから頑張る」など、ポジティブで心温まる事を言ったりします。
こういった子は本当に伸びますね。
そういえば、他の低学年の生徒様にも似ている子がいます。
最近では、低学年の方がガッツあるんじゃないかと感じることがあります。
この生徒様は、小学校一年生から教えていて、基礎を積み重ねてきた子です。
今回はこの子のすごい成長を見ていただこうかなと思います。
続ける事は大変だけど、意味があります。
決して急がず、少しずつ積み重ねてきました。
お父様、お母様、頑張ったので褒めてあげて下さいませ。

さて、これが小学校一年生の時の絵ですね。
多分イルカです。
お姉ちゃんが美術に興味を持ったことを機に、妹も一緒にと教室に入った普通の小学生です。
筆圧も濃く、筆も苦手でした。

これは今年の4月くらいの絵ですかね、だいぶ上手くなりました。
しかし、形を取るのは苦手だと本人は言います。
確かに、モチーフを見る目がまだ不安定な所はありますが、なかなか上手だと思います。
なんといっても小学校三年生ですからね。
まだ8歳なんです。そう考えると末恐ろしいです。
この子の特筆すべき所はずばり
頭の良さです。
勉強がどうかは知りません。
学業の方はどうか等とは聞いたことがないので。

その頭の良さではなく、絵を描く時にいかに考えて描けるかといった部分。
形取りは抜きにして、絵を描く上でデッサンの基礎、設計図の部分。
簡単に言うと物体に光が当たった時にどこが明るくなり、どこが暗くなるか。
という部分です。

我々絵を描く人は、ただ鼻歌を歌いながら何も考えずに描ける訳ではなく、こういった事を考えながら画面に反映できるかがとても重要です。

一年生の頃から、僕が呪文のようにずっと言ってきた部分なので、いつのまにか覚えていました。
しかし、筆はずっと苦手だったので、今回の作品を通して上手くなってもらおうと思いガチで教えました。
技術の部分です。
見ていると本人の頭には、設計図がちゃんとあるようなので、あとはそれを描けるか。
頭では描けるので、あとは技術の部分だけです。
ものすごい枚数描いていますので、可能な限り順をおってご紹介していきます。
全て違う絵で、その都度一から描いてるもので、全てグリザイユになります。

初期の頃のウサチョコです。
色の調整が駄目で、小学生特融のべた塗りです。

絵の具と水の調整が駄目です。
しかし、この子は何度やってもへこたれないガッツがありますので、どんどん描きます。

少し良くなってきました。
グラデが良い感じ。でもまだ不十分です。

だんだん良くなっていますが、まだ中間色が不十分。
まだまだ出来そうなので、さらにやってもらいました。

中間色が表現できています。
絵の具と筆で中間色を表現するのは、想像以上に難しい事です。
いい感じですが、最後にテストという名目でもう一回いってみよう。

良いですね、上手いです。
これを見ると、単純に上手だなと思われると思いますので、何がすごいかをご紹介します。

前述した通り、やはり頭の良さがいいです。
描きながらちゃんと考えている。

ちなみに、こちらは練習なので、水彩紙に描いていますが、水彩紙は一番明るいのは紙の白です。
そのため、セオリーとしては紙の白を残しながら描くのが一番美しいです。
しかし、これは難しい。
何故ならどこが明るくなるか、どこが暗くなるか頭にちゃんと設計図がないと出来ないから、です。
これが、油絵やアクリル画より水彩画の方が難しいという理由です。
大事な事を書きます。これだけは覚えておいてほしいです。
絵は暗くするのは簡単だけど、明るくするのはわりと難しい。
特に水彩画の場合は、難しいです。

最後のテストのウサチョコです。
ウサチョコの明るくなる場所を考えながら、暗くなる場所を徐々に暗くしていく。
それがこの子は出来ています。
本番にいったらキャンバスの白を残しながら塗るのではなく、ホワイトで明るさを調整していきますが、基礎のこういった部分が頭に入っているのは本当に強い。
これから本番のキャンバスに入りますが、
この子は、形さえクリアすればあとは順調に進むんじゃないかな…と思います。
最高のウサチョコを描いて下さい。
大切な今のウサチョコをキャンバスに記録しましょう。
クワガタ

虫博士の小学校五年生です。
こちらの子も頭が良いです。
前述のとおり、勉強の方は聞いていませんので分かりません。
美術的な頭の良さです。
しかし、先程の子同様、頭で考えるのは得意だけど、手元が苦手なタイプです。
なので、こちらの子も作品を通じて技術の練習をしていきました。
子供が美術をやる際やはり一番難しいのは【観察力の欠如】ですね。
どうしても、モチーフを適当に見てしまう。
今回のこちらの子の裏テーマは、この辺の矯正と技術の練習ですね。
あ、裏テーマというのは、今回の作品制作を通じて苦手な部分を克服させる。
全ての生徒様それぞれに僕が勝手に決めたテーマになります。
公表はしていません。
こちらの子もかなりの枚数を描きましたね。
ネガティブ発言がなく、ガッツがあります。
なかなか面白い。
形取りはまぁまぁ良くなってきたので、最近はずっと筆の練習をしていました。
・筆の扱い
・絵の具の扱い
です。
この過程で面白い特性というか個性をみつけたので、今回はそのお話を少し。
そのお話をする前に、頭に入れておいてほしいのですが、【インパスト】という技法です。皆様、ご存知でしょうか。

簡単に説明すると、【インパスト】とは絵の具を厚く盛り上げて塗る事をいいます。

ここでいう【厚く盛り上げる】とは、印象派のようなものではなく、造形的に意味のあるものです。
造形的に盛り上がっている場所に厚く絵の具を塗るといった具合です。

例えばこちらのドラえもん。
造形的にどこが前に出ていますか?
想像して下さい
正解は鼻と鈴です。
ここに絵の具を厚く塗る。これがインパストです。
他には、鑑賞者の視線を集めたい場所にインパストする事もあります。
こちらの子はこれらを教えずに、自分で【インパスト】をやっていたんですね。
多分、感覚で。
僕は見た瞬間、古典技法の【インパスト】だとわかりましたので、この子に聞きました。
「インパストって知ってる?」
すると、知らないと言います。
続けて、
「なんで、ここ盛り上げたの?」と聞きました
すると
「だって、背中出っ張ってるから。」と。

なるほど、レンブラントか。
レンブラントはインパストで有名ですが、レンブラントの肖像画は、光のあたる部分を厚塗りで、特に鼻なんかはつまんで持ち上がる程のものもあったという、当時の文章の記録を読んだ事があります。
虫博士ですからね。
ここは出っ張ってるから、造形的にも盛り上げる。
利にかなってるし面白いので、ある程度作品でも【インパスト】を使ってもらうと思います。
メディウム使おうかな…
その辺はちょっと考えます。
美術では、個性はひとつの武器になりますので、この辺も意識してやらねばと身が引き締まりました。ありがとう。
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