雪男の話
こんにちは黒猫の美術教室です。
タイトルを見ると、
今度は雪男か…と思ったかもしれませんが、今回は真面目な話です。
いや、いつも真面目です。
でも今回はそれ以上に真面目です。
色々書きにくい事ですが、頑張って書きます。
学校や絵画教室で初心者の方や子供が先生に絵の描き方を聞くと、大体こう返ってきます。
「感じたままに、思う通りに描けば良いんだよ。」
でも生徒は思った通りに描けないから聞いている訳ですから、答えになっていませんね。
残念ながら近代日本の美術教育では、技術を教える事は悪いことのように信じこまれてきました。
個性重視の美術教育を続けてきたのです。
個性を尊重するあまり、美術の基礎や技法を教え過ぎると「表現」や「個性」が型にはまってしまってしまう事を恐れたのです。
そういった教育を続けてきたため、今度は「教えられる人」がいなくなってしまいました。
これは、僕が絵描きをしてきて本当に感じる事ですが、いわゆるプロの画家として活動している人でも、正しい「技術」を扱える人と出会う事は滅多にありません。
僕の師匠はこう言っていました。
「優秀な絵描きを探すのは雪男を探すより難しい。」
当時の僕は意味が良くわかりませんでしたが、今なら良くわかります。
雪男は滅多にいないです(そもそもいるのでしょうか…)。
そんな雪男を見つけるよりも難しいのです。
話は戻りまして、そんな美術教育を続けてきたから、今のような現実があるわけですが。
確かに「個性」がなく型にはまった絵しか描けないのは、面白味に欠ける気がします。
しかし、その「個性」や「表現」というのは、次の段階の話だと思っています。
どんな「ものづくり」にも最低限の原則があります。
原則を無視した絵は、ただの落書きです。
芸術家の一流と二流以下を分けるのは作者の独創性と的確な表現力です。
・独創性
・表現力
この2つが伴っている事が、雪男(よりも希少な画家)の条件でしょう。
まず独創性ですが、これは必ず誰もが持っているものなので自身で向き合うものです。
それぞれ本当に違う個性があって面白いなぁと、教室の子供達をみていて良く思います。
でもこの個性は、表現力がないと形にする事が出来ません。
どれだけ良い感覚をもっていても宝の持ち腐れです。
もう一方の表現力は、原則の組み合わせプラスαから生まれるものです。
原則は決して難しくありません。
ある程度の答えがありますから、学ぶ気持ちさえあれば上達します。
この学ぶ気持ち、やる気があるかないかが一番結果を左右する部分だと思います。
なるべく小さいうちから、原則を覚えてしまった方が楽だと思います。
僕が師匠に弟子入りしたのが、18歳の頃。
今思うと、もっと小さいうちから学びたかったなぁと思うのです。今更どうしようもない事なのですが…。
自分が教える立場になり、漠然と大人の絵画教室を考えていたのですが、やはり自分の後悔を思うと、子供達に教えたいな…という気持ちが強くなりました。
芸術は人から人に伝わっていくものです。
僕は、未来のある子供達に正しい美術が受け継がれるのを期待しています。
そのために少しでも役に立てたら嬉しいです。
黒猫の美術教室 トップページへ戻る