子供達が自宅で下地作りが出来るように、ここに詳しく書きたいと思いますが、その他の方も是非ご参考にして下さい。
長くなりますが、どうか最後までご覧頂けたら幸いです。
目次
1.ジェッソとは
3.油絵の具の下地
4.ジェッソの種類
ジェッソとは
まずは、ジェッソを知らない方のために、ジェッソとは何か?というところからご説明させていただきます。
ジェッソとは、絵を描く前(絵の具を乗せる前)に様々な支持体(キャンバスや板など)に塗る下地材です。
元々は、テンペラ画などの地塗りに使われていた、石膏地ゲッソ(Gesso伊)がジェッソの起源です。
主にジェッソは、水彩系の下地に使われます。
油絵の具の下地にも使えますが、注意が必要です。
※詳しくは油絵の具の下地をご覧下さい。
主成分はチタニウムホワイト、炭酸カルシウム、エマルジョンとなっています。
まずは、ジェッソを構成するこの3つの概要を軽くご紹介いたします。
★チタニウムホワイト
絵の具にもあるので、馴染みがある方も多いと思います。
科学的にとても安定している顔料で、アルカリ性にも酸性にも強いです。
特徴は、隠蔽力が強く、とても丈夫です。
★アクリルエマルジョン
アクリル絵の具のバインダーとしても使われています。
アクリル系のメディウムにはほとんどエマルジョンが入っています。
★炭酸カルシウム
石灰を差します。
良く石膏と混同されていますが、正確には石灰は炭酸カルシウム、石膏は硫酸カルシウムとなります。
炭酸カルシウムだけを購入する事も可能です。
油絵の具に混ぜて使用したり、日本画では
胡粉(岩絵の具)といい膠(にかわ)に混ぜて使用します。
因みに、あまりやる人はいないと思いますが、アクリル絵の具に炭酸カルシウムを混ぜて使用することはあまりお薦め出来ません。
長期間の観測データがないので、年数が経ったときにどうなるのかわかりません…。
主成分についてはこんな感じです。
この辺はよっぽどでなければ覚える必要はありません。
1度に色々な事を覚えるのは、大変な事ですからね。
なんとなくで大丈夫です。
次はジェッソの使用目的についてみていきましょう。
ジェッソを塗るとどうなる?
ジェッソを使用出来る支持体は多岐にわたります。キャンバス、木、紙、石…などなど。
主な使用目的は、絵の具の定着を良くしたり、絵の具の発色を良くしたり、絵画の保存性にも影響してきます。
キャンバスや木に塗る事で目止めにもなります。
※木のヤニやアクはジェッソだけでは止められません。専用のシーラーを使い、その上からジェッソを塗って下さい。
ジェッソを塗る事で画面の状態をとても良い環境にするとお考え下さい。
バインダーがアクリル絵の具と同じ事でも分かるように、特にアクリル絵の具とは相性抜群です。
ジェッソを塗るとマットで半吸水性の画面が出来ます。
何層塗るかは好みによります。
精密画を描く方は、キャンバスの布目が邪魔になりますね。
そういった用途で、完全に布目を消してフラットな状態にしたい方はジェッソを繰り返し塗り、やすりで削って平坦な画面を作ります。
僕は平坦でフラットな画面が好きなので、10回以上は塗ります。
布目を生かして描きたい方は数回塗れば大丈夫です。
さて、ジェッソとアクリル絵の具の相性が抜群だと前述で説明してきましたが、油絵の具との相性はどうでしょうか。
油絵の具の下地
油絵の具の下地にジェッソを使われている方を良く見ます。
間違ってはいないのですが、油絵の具の下地としてジェッソを使う際には少し注意点があります。
ジェッソの上から油絵の具を塗る際は、必ずジェッソの水分を完全に無くしてからにして下さい。(下線)
ジェッソの水分が抜けていない状態で油絵の具を塗ってしまうと、後々剥離やひび割れに繋がります。
また、アクリル絵の具の上から油絵の具を塗る際も同様です。
必ず水分が抜けきってから油絵の具を使いましょう。
因みに、メーカーにもよりますが、アクリル絵の具の乾燥時間は72時間です。
3日ですね。
しかし、3日ではまだ安心出来ませんので、1週間~2週間余裕をもって乾かしておいた方が安全だと思います。
心配しながら描きたくないですもんね。
本来芸術作品は残るものです。
残った作品は時代を超えて人々を楽しませるものです。
きちんと計画性をもって下地を作りましょう。
なお、ジェッソを使うのが心配な方は、油絵の具のシルバーホワイトを使用するのがお薦めです。
ただ、シルバーホワイトは顔料の鉛白に有害性がありますので、ご使用の際にはご注意下さい。
海外では、もう手に入らなくなってしまったようですが、日本ではまだ購入出来ます。
ジェッソの種類
ジェッソは様々なメーカーから出ています。
アクリル絵の具を出しているメーカーでは、大体ジェッソも出しています。
各メーカーから本当に沢山の種類のジェッソが出ています。
初心者の方がジェッソを探す際、何を買えば良いか迷ってしまうと思います。
それぞれのメーカーに特徴があり、どれが良いというのはありませんが、混乱しないように今回はホルベインから出しているジェッソをご紹介致します。
ホルベインでは、通常のジェッソだけでも4種類あります。
これ、初心者の方が画材屋さんに行ったらパニックになりますよね。
大丈夫です。
1つずつご紹介していきます。
4種類の違いは何かというと、乾燥後の地肌が異なります。
ご参考程度にS~LLの特徴をご説明させていただきます。
ご自分の作りたい下地に適したジェッソをお選び下さい。
ジェッソ[S]
ホルベインのジェッソの中でも一番粒子の細かいジェッソとなります。
6ミクロンの細かい粒子で、陶器やガラス面のような画肌になります。
精密画を描くにはこれが向いていますね。
ジェッソ[ M ]
標準的な粒子で、標準的な画肌になるジェッソです。
特にこだわりが無い方や、初心者の方はこれを選べば間違いありません。
ジェッソ[L]
少し荒い粒子のジェッソです。
40ミクロンの粒子でザラザラした画肌なります。
ジェッソ[LL]
物凄く荒い粒子のジェッソになります。
商品説明には、なんと150〜400ミクロンの粒子と書いてあります。
超ザラザラです。
凸凹した砂目のような画肌になりますので、そういったマチエールにしたい方はこちらをお選び下さい。
通常のジェッソの他に、カラージェッソ、クリアジェッソ、ブラックジェッソなるものも存在します。
まずはカラージェッソの種類をご紹介いたします。
カラージェッソとはジェッソに色がついたものです。
有色の下地が必要な時に塗ります。
ホルベインだと、カラージェッソは300mlと900mlの容量が出ています。
それぞれの容量のカラーラインナップをご紹介いたします。
★300mlのカラージェッソ
・レモンイエロー
・ライトグリーン
・グリーン
・テールベルト
・ネイビーブルー
・コバルトブルーヒュー
・セルリアンブルーヒュー
・バイオレット
・イエローオーカー
・ローアンバー
・レッドオーカー
・バーントアンバー
・グレイV-5
・グレイV-7
・ブロンズ
・シルバー
・ゴールド
以上17種類です。
すごい数ですね。濃さの違うグレイが2種類ラインナップされています。
続いては900ml タイプの種類をみていきましょう。
900ml のカラージェッソ
・カーマイン
・オレンジ
・ジョーンブリアン
・イエロー
・レモンイエロー
・ライトグリーン
・ グリーン
・テールベルト
・ネイビーブルー
・コバルトブルーヒュー
・セルリアンブルーヒュー
・ バイオレット
・イエローオーカー
・ ローアンバー
・ レッドオーカー
・バーントアンバー
・ グレイV-5
・ グレイV-7
・ブロンズ
・シルバー
・ ゴールド
以上21種類です。
カーマイン、オレンジ、ジョーンブリアン、イエローなど、300mlには無い色もありますね。
ブルー系だけでも、ネイビーブルー、コバルトブルーヒュー、セルリアンブルーヒューの3種類あります。
これだけあれば有色下地には困らないかもしれません。
因みに通常ジェッソのようなS、M、L、LLなどの粒子の種類はなく、カラージェッソはMとLの2タイプになります。
続いては、クリアジェッソをご紹介いたします。
クリアジェッソも、MとLの2種類です。
使用用途に合わせてお選びください。
クリアジェッソは半透明の地塗り材で、鉛筆の線などを活かしたい時に使います。
クリアジェッソ [ M ]
標準的な粒子のクリアジェッソです。
クリアジェッソ [ L ]
粒子の荒いタイプです。
最後にブラックジェッソをご紹介いたします。
こちらは名前の通り、黒いジェッソになります。
ブラックジェッソの仕様用途は様々で、例えばブラックジェッソを下地にして、その上から色を置いていく場合、下地が黒の為上から置いた色の明度や彩度が押さえられ、引き締まった光表現が可能になります。
レンブラントのような、暗い画面に光を描くような作風の方にはお勧めですよ。
光が当たっている部分を白を加えた絵の具で描き起こすような感じです。
他の用途では、黒板を作成する時なども使用したりしますね。
色々と便利なブラックジェッソです。
ホルベインのブラックジェッソは粒子は標準タイプのみの取り扱いになっています。
容量は300ml、330ml、900mlがラインナップされております。
使用用途に合わせてお選びください。
ここまでジェッソについてご説明させていただきました。
次は、実際にジェッソを塗ってみましょう。
実際にジェッソを塗ってみよう
子供達の初めてのジェッソ塗りの様子を紹介しながら、進めていきます。
ジェッソを塗る時は気をつけていても必ず汚れるので、汚れても大丈夫な格好で行います。
まずは、必要な道具をご紹介いたします。
ジェッソです。
これがないとはじまりません。
今回は通常のジェッソの[ M ]を使用します。
ジェッソを入れる入れ物とジェッソを混ぜるゴムベラです。
入れ物はなんでもいいですが、ガラス製だと残ったジェッソが落ちやすいので今回はこちらを使用いたします。
両方ともキッチン用品です。
秤(はかり)です。
無くても大丈夫ですが、今回は子供達の初めてのジェッソ塗りなので、水とジェッソの量を正確に測る為に用意しました。
詳しくは後程ご説明いたします。
刷毛とペインティングナイフです。
どちらかをお好きな方で塗っていただいて構いませんが、キャンバスに塗る場合等、慣れてしまえばペインティングナイフの方が綺麗に塗ることができると思います。
その為、今回はペインティングを使いたいと思います。
パレットです。
ジェッソを塗る時に使用します。
あとかたずけが楽になるのでラップをしておきます。
紙やすりです。
ジェッソを削る為に使用します。
使用する道具は以上になります。
では、ジェッソ塗りを初めましょう。
ジェッソは、そのままだとドロドロ過ぎて塗りづらいので、水を混ぜます。
水の量は20%までとなっています。
水分が多い方がムラになりにくいので今回は20%まで水を入れたいと思います。
例えばジェッソが200グラムなら水が40グラムとなります。
これをはかる為に、先程紹介した秤を使います。
秤の上に入れ物を置いて、200グラム出します。
※秤は0.0gまで測定できるように設定しております。
続いて水を40グラム入れます。
水が入りましたら、ゴムベラでよ~く混ぜます。
混ぜたつもりでも、ちゃんと混ざっていない事もあるので、ちゃんと混ぜましょう。
はい、上手く混ざったら、パレットに少量のジェッソを取ります。
パレットは受け皿のような使い方です。
ここから塗りの作業になります。
塗り方は諸説あるといいますか…これが正しいというものがありません。
ひとつはこのようにまず縦方向にジェッソを塗ります
先程塗ったジェッソが乾いたら、今度は横方向に塗ります。
このように縦→横→縦→横…のように塗っていくのが綺麗に仕上がる!という人もいますし、そんなことしちゃ綺麗に仕上がらないよ、という人もいます。
ただ僕の経験上、この縦→横→縦→横で塗った方が綺麗に仕上がるような気がします。
なので、子供達にもこちらの方法で教えました。
後にやすりで削りますので、多少ムラになっても問題はないです。
子供達にもこの方法で塗るように指導いたしました。
さて、では塗ってみましょう。
ペインティングナイフにジェッソを取ってキャンバスに塗ります。
あまり力を加え過ぎずに塗りましょう。
一度に沢山塗ろうとせずに、数回に分けます。
最初は難しいと思いますが、徐々に慣れます。
塗っていると、キャンバスの側面にジェッソが垂れますので、指でぬぐっておいて下さい。
そのままにしてしまうとカチカチにかたまり削りにくくなってしまいます。
これで、一回目の塗りは終了です。
必ずジェッソと使った道具にラップをしておいて下さい。
ジェッソを塗ったキャンバスはしばらく乾かします。
先程塗ったジェッソが乾いたら、もう一度同じ作業を行います。
乾燥時間は、塗り方(厚さ)や季節にもよりますので、表面をよくみて乾いたことを確認してから次に進みます。
乾いたのを確認したら、もう一度同じ作業をします。
先程とは違う方向に塗ります。
先程同様、あまり沢山ジェッソを乗せないで薄く塗りましょう。
塗り終わったら、また乾燥させます。
乾いたら、また同じ作業を…。
3~4回程度塗ったら、紙やすりで削りましょう。
ある程度ジェッソを塗ってからでないと、キャンバスを傷付けてしまう恐れがあるので、削るのは3~4回塗ってからにしましょう。
これ以降は、毎回塗り終わる度に削っていただいて構いません。
何回塗ればいいか?という部分ですが、これは好みによります。
フラットでツルツルの画面が好きな人は10回以上塗る必要があります。
逆にキャンバスの目が見えているぐらいが好みの方は2~3回塗れば十分です。
以上がジェッソ塗りになります。
今回はF0キャンバスなので小さくて簡単ですが、これが大きなキャンバスになると重労働です。
ここまで読んで下さった方、有り難うございました。
今までの本の中でも、かなり長いものになりました。
このジェッソの本が、少しでも皆様の制作のお役にたてれば幸いです。
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