マチエールとは? - 絵肌で変わる表現や個性

美術界には様々な専門用語があり、初心者の方にはなかなか覚えにくいものです。

それが原因で、美術から遠ざかるといった事もあるでしょう。

そんな方々にお役に立てればと、今回は美術で良く使われる用語「マチエール」について解説致します。


子供や初心者の方にも読みやすいように配慮して書きたいと思います。

誰でも理解出来るように順をおってご説明いたします。
どうか最後までご覧下さい。


目次

1.マチエールとは

2.マチエールは個性


マチエールとは

マチエール

マチエール(仏:matiere)とはフランス語で物質、品質、質を指します。

絵の具の材質と使用状況からなる絵肌の調子という意味で使われます。


絵肌の調子?


活字にすると良くわからなくなりますね…。


絵肌の調子とは、例えば

・ツルツルしいる

・ざらざらしている

・ぼこぼこしている

・がさがさしている

・ぼこぼこしている

・粉っぽい

等々、眼で見た絵肌の事です。
触ってみた感触ではありません。
実際に触った感触だと少しニュアンスが違います。

あくまでも、眼で見た絵肌の調子と認識しておきましょう。

マチエールは個性

沢山の絵画作品

マチエールは、作者それぞれが持つ個性です。
癖という言い方も出来るかもしれません。

その違いは、使う絵の具の種類にもよりますし、支持体(キャンバス、板、紙)の種類によっても変わってきます。
油絵の具を使う方は、溶き油の違いでも影響が出てきます。

また、筆やペインティングナイフ等による違いもあります。

硬い豚毛の筆を使用した絵は、がさがさした荒々しいマチエールになりやすいですし、逆に柔らかい筆を使用した絵は、平坦なマチエールを作りやすいです。

勿論、筆さばきによってもマチエールに違いが出ますよね。


写実を描く人はツルツルでフラットなマチエールになります。
写実の人は柔らかい筆を好む場合が多いです。
繊細な筆さばきが必要になりますから、硬い豚毛では都合が悪いのです。

絵画作品

僕なんかも、このツルツルでフラットなマチエールに入ります。

写実を描く人は、写真みたいだねと言われる事がよくあるのではないかと思いますが、これはマチエールによる印象も大きいと思います。
グレーズを繰り返し塗っていく作業になる為に、最終的にフラットなマチエールになっていきます。

 

一方、印象派のように厚く絵の具を塗る作家は、ぼこぼこしたマチエールになりますね。

ポール・ゴーギャン「黄色いキリストのある自画像」

ポール・ゴーギャン「黄色いキリストのある自画像」

「1㎏の緑色絵の具は半㎏の緑よりも一層緑である。」


ゴーギャンの言葉です。


ん?何言ってるんだ、ゴーギャンさんと思った方。


分かりやすく言うと、

ゴーギャンは絵の具は厚い程力強いと言っています。

 

ジョルジュ・ルオー「見習い職人(自画像)」

ジョルジュ・ルオー「見習い職人(自画像)」

例えばルオーの描く作品も厚塗りで有名です。
50号程度の作品となると、1人ではとても持てない程だと言います。
ちなみに画像は54歳の時の自画像です。

 

フィンセント・ファン・ゴッホ「自画像」

フィンセント・ファン・ゴッホ「自画像」

ゴッホも厚塗りで有名ですね。

油でよく練った絵の具を細い平筆へ大量につけて、ぐいぐいと塗りつけています。

 

デジタルアート

では、デジタルで描いた作品はどうでしょうか。

デジタルの作品は、基本マチエールはありませんね。

いや、特殊な印刷方法を使えば、支持体のマチエールを出す事は可能でしょう。
例えば、キャンバスや板に印刷すれば、その支持体が持つマチエールがそのまま出る訳です。

…これは、マチエールとは呼ばないかもしれませんね。


つまりデジタル作品には、個性のひとつであるマチエールが存在しない事になります。

決してデジタルを批判している訳ではありません。
デジタルの作品もひとつの表現方法として、とても優秀な事も事実ですから。

ただマチエールは、どんなに頑張ってもアナログに勝てない部分なのかな…と思います。


うーん、これも将来的にはわかりません。

 

ぼこぼこしたマチエールの萌えキャラクターとか。



こういったマチエールも表現出来るスーパーマシンが開発されるかもしれませんよね。

コンピュータの進化

プリンターの進化とソフトの進化で、デジタルにも作家の個性を入れられるようなシステムが構築されて、自由自在にマチエールを作れる時代が来るかもしれません。

その時はデジタルがアナログに一歩近づく瞬間になりますね。

その辺りがどう進化していくのかも、今後楽しみです。



さて、話をアナログに戻しまして。

初心者の方の絵は、弱々しくマチエールが頼りないものが多いです。
制作に慣れてきたら、マチエールにもこだわって自分の表現を見つけていくと良いです。


独特な画風と言われた時には、必ず作家独特なマチエールが含まれています。


自分の画風を、自分のマチエールを探しましょう。
絵を描くというのは、ひとつの探求です。

絶え間なき探求で、必ず自分にしかないマチエールを発見出来るはずです。


さて、ここまで読んで頂いた方は、もうマチエールの意味はご理解いただけたと思います。

 

もう、マチエールマスターですね。

 

これからも、一般の方が聞いても「?」な美術用語の解説も書いていこうかな…と思っております。

ただ、基本的に僕一人でホームページの更新を行っておりますので、非常にゆっくりしたペースになります…。

書きたい事は沢山あるので、頑張って少しずつ書いていきたいと思います。

最後までご覧いただきまして有り難うございました。



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