デッサンで基礎画力をつけよう

もくじ

デッサン

観察することの重要性

対象を面でとらえる

光と影を操る

子供の生徒さんと助手が描いたデッサンをご紹介します

デッサン【仏:dessin】

デッサン【仏:dessin】は、フランス語ですが、16世紀初頭には【desseing】とか【desein】などと書かれていました。
意味は【石墨で描かれたもの】です。
その後 百年ほど経過し、現在の【dessin】という表記になりました。
デッサンとは、作品ではなく基礎画力(デッサン力)をつけるためのものです。

卓越した画家が描いたデッサンは作品になりうるかもしれませんが、基本は自分の作品の為、考えかた、完成度をあげる為のものだと考えて下さい。僕は空想的なモチーフを描くことが多く、またキアロスクーロスフマートなど、とても古典的な技法で描いております。僕の絵画表現にはデッサンは不可欠で軸となるものです。
実際に存在しないものに、自由に光を操りそれを組み立てる力が必要になりました。
目の前にあるものを描くのと、実際に存在しないものを描くのとでは格段にレベルが上がります。
その為、ハイレベルなデッサン力が必要になり、デッサンに関しては人よりも沢山描いてきたという自負があります。
もっともっと正確に光の動きを知りたい時は実際に模型を作り、光をあてて考えることもしますが、簡単な形であれば頭の中で光をあてます。
デッサンは人によってはあまり楽しくない作業だと思います、簡単に言うと三次元の目の前にあるモチーフを2次元のものに変換する作業であり、美術の考えかたそのものです。

観察することの重要性

デッサンが成立する最低限の条件は形と調子です。

基本的には自分の目で物の縦横の比率やもの同士の大きさの差を見る観察の作業から始まります。
なぜデッサンが描けると、作品制作の基礎画力が上がるのかというと、その理由の1つは「観察力」が身につくからです。
目が鍛えられるんですね。「陰影の強弱」だとか、「構図のバランス」だとか、「光」だとか、「正確に形を表現する」とかを考えながらモチーフと向き合います。人によってはあまり楽しくない作業だと思います。
けれど、それがものすごく大事なことで、それが普通に描くことができるようになるということは、モチーフの印象を正しく捉えることができるってことです。それだけの観察力が備わったということだからです。
ゆえに、デッサンがきっちりできる人の作品とできない人の作品を比べると情報の量が全く違います。
きちんとしたデッサンが身に付いていれば、作品を見る人を納得させるだけの説得力を持たせることができ、自分自身も全く違う物の見方ができるようになります。

デッサンの上達法は「とにかく沢山描くこと」と「とにかく沢山見ること」 につきます。

描いている時間よりモチーフを観察する時間を沢山とってあげるのもいいでしょう。
実際に触ってみるのもいいと思います。
実際にそのものを触ると「質感」「温度」「重さ」など、色々な情報が手に入ります。良く観察しながら描いていきましょう。

対象を面でとらえる

対象をデッサンするときには面でとらえる癖をつけましょう。

例えば丸い物を描くときにも、四角く描きます。そこからさらに面でとらえていき、最終的に丸くしていきます。
明確な形の凹凸がない場合でも、形の変わり目(面の変わり目)を見つけて面でとらえると立体感につながるのです。

お料理の面取りをイメージしてみて下さい。
完全に丸く剥く事は難しいので、人参の皮を包丁で剥くと面ができますね。
丸くしたいならそこからさらに面取りをして丸くしていくと人参は限りなく丸に近づいていきますね。
デッサンでいう面でとらえるとは、こんなイメージです。

つねに面で考える事が大切です。
人参はよく見ると八角柱です、大根も八角柱、バナナはよく見ると五角柱、リンゴも五角形……。
このように身近にあるものから面で見る訓練をしましょう。

面で見る癖がつくとあらゆるものが面で見えてくるはずです。

まずは大まかに面でとらえてから細部を描くように心がけましょう。

光と影を操る

デッサンを極めていくと光を自在に扱えるようになります。
好きな方向、好きな角度から頭の中で光の方向を組み立て対象に光を当てられるようになります。

ここまでくるのは大変な修行が必要になりますが光を扱えるようになるのは絵描きとしてとても心強いものになります。
また、色彩の要素を取り払い明暗の強弱で対象をとらえる事により、絵の具で描く際に色彩のみに集中できるようになります。
とてもシンプルに考えられるようになる為制作が楽になるでしょう。

ここまで来るには訓練が必要になりますが、得られるものがとても多いです。

子供の生徒様と助手が描いたデッサンをご紹介します

小学校3年デッサン

小学校3年生の生徒様のデッサン

小学校5年デッサン

小学校6年生の生徒様のデッサン

複雑に重なった本という少し難しいモチーフですが、とても上手に描けています。
影を効果的に使い前後関係を明確にしているのも好感が持てますね。

小学校5年デッサン

小学校5年生の生徒様のデッサン

質感の違うモチーフの組み合わせのデッサンです。

円筒形の口や底面は、質感がよくあらわれる部分であり、描きこみが重要になる部分です。
まだ小学生ですが、口や底面を強いタッチで描きこまれ、本との前後関係(透かせて描く事により)ボトルの質感や透明感を上手に表現できています。

少し歪んだ瓶(全体的に緩やかな曲線のボトル)を描いてもらいましたが、惑わされずに良く観察して描けています。

大人のデッサン

助手のデッサン


僕のお手伝いをしてくれているスタッフが描いたデッサンです。

とてもデリケートなタッチを重ねて繊細に描かれています。
作品下部の模様が作品を引き立てていて、全体のバランスを上手にとっています。
また前面に入れたハイライトが缶の質感を上手に表現しています。 大人のデッサン

助手のデッサン

繊細なデッサンでありながら、缶の口、底の地面に接している部分は強く描かれ、質感を表現すると共にを全体を引き締めています。
バックの色と接する部分をぼかす事(スフマート)により空気に溶け込んでいますね。

 

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